認知症になると意思能力がないので、お父さんが自分で払えないっていう話ですよね?
一緒に母親が住んでいるので、母親が払えばいいと思います。
母親も歳だから、数年後にはわたくしが両親を近くに引き取るか、一緒に住んで、その時はわたくしが支払えば済むことですよね?
その通りですが、そのお金はどこから出しますか?
あなたが出してあげますか?
いやいや、まだ子供の教育費や家のローンなど出費も多いので、お父さんの預金を取り崩したり、両親を近くに引き取るときは、実家は売却しますよ。
認知症だと意思能力がないのは、最初にあなたも気づかれました。
意思能力がないと、資産は凍結され、預金の解約や不動産の売買などが出来なくなります。
ちょっと待ってください。
預金の解約が出来ないって、認知症の本人が自分で解約出来ないだけで、まだしっかりしている母親や、わたくしが解約すればいいんじゃないんですか?
残念ながら、認知症になり意思能力がないと判断されると、しっかりしている母親でも、あなたでも、お父さん名義の預金は解約できなくなってしまいます。
でもでも、お父さんの生活に必要なお金ですよ。
悪用するわけじゃないし、銀行に説明して解約してもらいます。
過去には、家族でも預金の解約に応じてもらえた頃があったのですが、最近では、本人確認が厳しくなって、本人以外の方では、ご家族であろうと預金の解約に応じてもらえないのです。
おそらく「成年後見制度」を利用してください。と紹介されます。
成年後見制度って、聞いたことがあります。
家族や弁護士などの専門家が成年後見人になって、お父さんを見てあげる制度ですよね?
母親かわたくしが成年後見人になって、銀行口座を解約すればいいっていう話ですよね?
そんなに簡単な話ではありません
成年後見人は家庭裁判所に申請して、家庭裁判所が成年後見人を選任します。希望すればご家族が専任されることもありますが、最近では希望しても弁護士や司法書士等といった第三者の専門家が選任せれることが多く、約7割は第三者の成年後見人です。
また、銀行口座を解約したらおしまいというわけにはいかず、成年後見人が専任されると、お父さんがお亡くなりになるまで、成年後見人がお父さんの財産を管理することになります。
成年後見人は、お父さんのために預金等を管理することになります。
お父さんのためって…
え? お母さんはどうなっちゃうのですか?
お父さんがお母さんを扶養する義務があったのであれば、成年後見人からお父さんの預金より生活費を出してもらえますが、外食や旅行、お買い物等の出費は抑えられ、生活水準は今より下がる可能性が大きいです。
お母さんの生活水準を下げるのに、成年後見人に、毎月3万円~6万円の報酬を支払うことになります。それはお父さんの財産から、お父さんがお亡くなりになるまでずっと支払われます。
1年で36万円~72万円、10年間で360万円~720万円の報酬となります。
報酬もかかるしお母さんに不自由をさせるのなら、認知症になっても、成年後見制度は利用しなくてもいいのですか?
利用しなくても大丈夫ですが、お父さん名義の預金や不動産は凍結されたままなので、お父さんとお母さんの生活の面倒を、あなたがみなくてはならなくなります。
他に方法はないのですか?
お父さんが認知症になってしまったら、他の方法はありません。
成年後見制度を利用するか、利用しないかです。
利用すると預金は解約できますが、預金を管理するのは成年後見人で、報酬は掛かる上に、お母さんの生活水準は下がります。
利用しないと、預金が解約できないので、生活費はあなたが助けてあげることになります。
でも、認知症になる前ならば、成年後見制度を利用しないでお父さんの財産を凍結させない方法があります。
お父さんが認知症になる前であればです。
どういう方法ですか?
まず、お父さんが認知症になる前に定期預金は解約して全部普通預金にしてください。
普通預金は、カードを作って暗証番号を聞いておくか、家族カードを作っておけば、お父さんが認知症になった後でも、カードでお金をおろすことが可能となります。
わざわざ、銀行にお父さんが認知症になったなんて言わないことです。
窓口での手続きが必要な定期預金等の解約がなければ、お父さんが認知症になっても、銀行にはわからないので大丈夫です。
ところで、凍結されるのは、銀行預金だけではなく不動産も凍結されてしまいます。
先ほどの会話の中で、ゆくゆくは実家を売却して、自分の近くに引き取ることも考えているという話が出ましたが、認知症になると、この実家など不動産の売却が出来なくなってしまいます。
この対策はあるのでしょうか?
お父さんが認知症になる前であれば、これも対策があります。
「家族信託」という仕組みを利用することで、お父さんが認知症になっても、資産を凍結することなく利用・処分等が出来ます。
いずれの対策もお父さんが認知症になる前です。
「家族信託」というのは、どういう仕組みですか?